マイホームを手にして間もない頃は、その緊張感と責任感から、住宅ローンの延滞・滞納をおこすことなど、考えもしなかったでしょう。
しかし、住宅ローンというのは、最長35年とかなり長い期間にわたる返済。
人のライフステージは移りゆくものですから、住宅ローンを組んだ時から、まったく状況が変わっていないという人はいないはずです。
その過程には、お子さんがうまれて新たな家族をむかえることもあるでしょうし、そのお子さんが成長すれば、高校・大学と進学していっていることでしょう。
お子さんだけでなくあなた自身も、昇給・昇格など職場での立場がかわっているかもしれません。
逆にいいことばかりではなく、勤め先の影響をうけた転職や減給、家庭においても離婚や夫婦いずれかの病気やケガなど、労働環境や条件を変えざるをえない状況になってしまうことだってあるでしょう。
そんな状況の変化などお構いなしに、住宅ローン返済の義務というのは、あなたにのしかかってきます。
そのまま何も変わることがなければ、問題なく完済できるハズだった住宅ローンの、延滞・滞納のはじまりというのは、あなたひとりで何かをしてというより、他からの影響によるものがほとんどです。
そのように、やむおえず住宅ローンを延滞・滞納…となってしまった際、まずあなたの頭の中に真っ先にうかんでくるのは、”競売”や”強制退去”、”資産没収”のような最悪の状況ではないでしょうか。
恐ろしい口調でしつこい取り立てにあい、着の身着のまま家を追われる…莫大な借金だけがのこって、何もかもを失う…
と、そこまではさすがに「債務者であるあなたの生活再建」の観点からもありませんが、少なくとも住宅ローンを滞納しつづけるということは、多少の不利益を受けることになるでしょう。
この記事では、住宅ローンの延滞・滞納をおこしてしまったあと、あなたにどのようなことが起こるのか、くわしくお話ししていきたいと思います。
この記事の目次
その延滞・滞納、返済のメドは立つ?
まず最初に考えなければならないのが、今おこしてしまっている延滞・滞納というのは、一時的なことによるものなのかどうかということです。
たとえば転職や減給など、あなたのお勤め先の状況が悪化したことによるものであった場合、もとの収入や条件にもどる保証はなく、むずかしいと考えるべきでしょう。
病気やケガなども、一時的に働けない状態なだけであって、数か月もすればまた同じ就業条件にもどせると分かっていればいいのでしょうが、後遺症がのこってしまったり、負担のかかるような通院をしいられるようになれば、やはりむずかしいと考えた方がいいのかもしれません。
ここでムリをしてしまうと、後のあなたとあなたのご家族の生活にとって、負担がおおきくなってしまいかねません。
一時的にしのげば何とかなるのか、しばらく続いてしまう可能性があるのか。
そして、そのあいだご家族がどこまで協力していけるのか。
滞納がふくれ上がり、身動きが取れなくなってしまう前に、ご家族としっかり話しあいをしておくべきでしょう
あなたに待ちうける不利益
以前にくらべれば、ずいぶん「債務者の生活再建」というのが尊重されてはいるものの、やはり不便をしいられることになったり、一定期間のあいだ信用をうしなったりすることはあります。
具体的にどんなものがあるか、くわしく見ていきましょう。
遅延損害金
ここは見落としがちなところですが、クレジットカードの支払いや税金においても、約束の日までに支払いがなければ、遅延損害金という罰則がかかり、その計算式は以下のとおりです。
借入残高(現在遅延分)×遅延損害金利率÷365×遅延日数=遅延損害金
遅延損害金利率は、住宅ローンの場合だいたい年利14%のところが一般的です。
仮に毎月14万円のローン返済をしていた場合、年利14%で一ヶ月(30日)延滞すると、遅延損害金が1,610円つくことになります。
大したことないと思われたかもしれませんが、次の月も延滞すれば、その延滞金の残高は28万円にふえるのです。
さらに次の月もとなれば、延滞金の残高はふえていくため、その残高をもとに計算される遅延損害金は、どんどん金額が大きくなっていくことになりますよね。
これだけなら、まだ何とかなるかもしれませんが、やがて延滞がすすみ、月々返済ができなくなって一括返済をもとめられる時がきます。(期限の利益の喪失)
その時には、あなたが借り入れをおこなった金融機関から、ローン契約時に保証会社となっていた会社に、あなたの債権者が移行しているでしょう。
債権者が移行するということが、何を意味するかというと、今まであなたが金融機関と定めてきた返済条件などが、無効になってしまうということなのです。
そうなると、先ほど例をあげたように毎月少しずつ延滞金残高(現在遅延分)がふえるのではなく、住宅ローン残債全額が延滞金残高(現在遅延分)とされる時がくるのです。
仮に、1400万円の残債がある状態で、一括返済をもとめられる状態になったとすれば、それだけで一ヶ月16万円以上の遅延損害金です。
延滞・滞納がつづけばつづくほど、ふくれあがっていく遅延損害金は、大きな負担でしかありません。
そして、住宅ローンのみならず、固定資産税などの税金にも遅延損害金はかかります。
その他の支払いにも影響がでているのであれば、それぞれジワジワと増えていくことを、頭の片隅に入れておかなければなりません。
ブラックリスト(金融事故情報)
何となく耳にされたことがあるかもしれませんが、住宅ローンに限らず、クレジットカードや携帯電話料金、車のローンなど、あなたが支払いをおこなった記録がのこっています。
個人信用情報と言ったりしますが、この記録はあなた自身が取りよせて閲覧することもでき、期日に支払ったのか延滞したのかなどが分かるようになっています。
この個人信用情報は、ローンを組んだりクレジットカードを作ったりする時の、審査にも使われています。
そのため、住宅ローンの延滞がつづいた記録が残っていることで、金融事故の履歴があるとみなされ、審査がとおりにくくなるのです。
その状態を、いわゆるブラックリストと言ったりしますが、この記録がのこってしまうことで、今後のあなたの生活に不便をしいられることになるでしょう。
団体信用生命保険 強制解約
住宅ローン契約者を被保険者とした生命保険で、カンタンに言ってしまうと、万が一のときに住宅ローンがチャラになる保険です。
契約している保険の種類によっては、死亡・高度障害だけでなく、生活習慣病などの疾病特約がついているものに、加入していることもあるでしょう。
先ほど、遅延損害金のところでお話ししましたが、債権者が金融機関から保証会社へ移行したときに、この団体信用生命保険も強制解約となってしまいます。
もし強制解約をされた直後に、病気になってしまったりすれば、保険は適用されず、住宅ローンがそのまま残ってしまいますから、あとは個人で加入している保険でカバーするしかないことになります。
競売・強制退去
これは最終段階であり、延滞しているのに何もせず、そのまま放置してしまった結果こうなる、というものです。
こうなってしまう前に、ほかの収入源を確保したり、金融機関へ相談にいったり、それでもむずかしければ任意売却を試みるなど、とにかくやれることは全部やる、くらいのお気持ちをもっていただきたいと思います。
逆にいえば、こうなってしまう前に、あなたが動けばできるコトはあるのですから、最悪の事態をさけるためにも、早めに相談をすべきでしょう。
絶対にやってはいけない2つのコト
1.不誠実な対応
延滞をしはじめると、金融機関から督促の書面や、電話などがくるようになります。
不誠実な対応とは、これを無視しつづけることです。
もしあなたが、お金を貸している立場だったとします。
返済もせずいつまでも連絡が取れない人と、自分の状況を話してなんとか払えるようにすると一生懸命さが伝わるような人、どちらの方が印象がいいでしょうか。
印象をよくしたからといって、返済ができないことに変わりはない、と思われるかもしれませんが、決して意味のないことだなどと思わないでください。
今後の返済についての相談や、残債がのこってしまう任意売却なども、金融機関からの承認が必要となるのです。
不誠実な人に対して、金融機関もそこまで柔軟な対応はしようとは思いませんよね。
誠実に対応しておいて、それが不利益につながることはありませんし、何よりあなたを信用して何千万というお金を貸してくれたのですから、誠実に対応するのが当たり前ともいえるでしょう。
2.キャッシング補填
返せるアテのないお金は借りない。
「借り入れができる金額=返済ができる金額」ではないということです。
住宅ローンの延滞・滞納をおこしてしまう方が、キャッシングでその場をしのいでしまうことはとても多く、そこから自転車操業のように借り入れをふやしてしまうのです。
はじめは住宅ローン返済のためだけだったものが、結局そのほかの支払いも回らなくなり、返済のために借り入れをしていく。
その先がどうなるかは、お分かりいただけることと思います。
キャッシングというのは、クレジットに付帯されていたり、審査が比較的あまかったり、手軽に借りられてしまうものなので、つい手を出してしまいがちです。
しかし、あなたの預金でない限り、借りた額よりも返す額の方がおおきくなるのですから、負担はどんどんふえる一方なのです。
まとめ
どんな事情があるにせよ、借りたものは約束通りに返済をしていく。
それはなにも、住宅ローンに限ったことではないでしょう。
少し厳しい表現にはなりますが、延滞・滞納というのは、あなたが金融機関との約束を、先にやぶってしまったということです。
そう考えると、あなたが金融機関に対して「不誠実な対応」をするというのは、絶対にすべきではないことは、お分かりいただけるかと思います。
しかし、これまでに挙げた不利益というのは、一度にすべてを受けるわけではなく、段階をおって受けるものです。
その不利益を、少しでもおさえるためにも、一日もはやく相談をして、対策をすべきでしょう。
そうすることが、今後のあなたやあなたのご家族の負担を、軽くすることにもつながるのです。