人生の一大イベントである結婚を機に、35年ローンを組んでマイホームを購入。
子どもも産まれて家族もふえ、これからもっとお金もかかるようになってくる。
結婚をすれば、独身時代にひとりで生活していた時とはちがい、夫として…妻として…そして親として、精神的にも金銭的にも”責任”がうまれてくるでしょう。
夫婦でともに手を取りあって、協力していかなければ…
そうと分かってはいても、やはり人と人ですから、すべてが思うようにいくものではありません。
離婚理由としてよく挙げられる、性格の不一致や価値観のちがい、DV(家庭内暴力)。
こういったところは、家計を一緒にして生活をしてみなければ、分からないことも多いでしょう。
この記事では、やむおえず離婚となってしまった時に、まだまだ住宅ローンの返済がのこっている場合、借金がのこってでも売るべきか、そのままどちらかが住みつづけるか、その考え方についてお話ししていきます。
この記事の目次
約8割の人が”持ち家志向”
※国土交通省 「H29 土地問題に関する国民の意識調査」に基づいて作成
「財産をのこしてあげたい」「家賃を払うのがもったいない」など理由はさまざまですが、住宅を所有したいと考えている人は約8割と、持ち家志向がまだまだ根強いようです。
それから、結婚を機に住宅を購入した人は4割強。(2010年 アットホーム調べ)
結婚のタイミングだけでなく、妊娠・出産や、子どもの入園をキッカケに購入する人も多く、結婚から5年以内にマイホームをもつ夫婦は半数をこえてくるでしょう。
”5年未満”の離婚が34%
※厚生労働省 人口動態統計・特殊調査「離婚に関する統計」に基づいて作成
このグラフにあるとおり、結婚をして一緒にくらしはじめてから、離婚をするまでの期間というのは、5年未満が34%と一番おおいのです。
そして、10年未満にして見てみると、半数以上が離婚をしていることになります。
住宅に関していえば、結婚のタイミングでの購入は4割であったとしても、2~3年のあいだに頭金を貯めて、購入することも多いでしょう。
そしてそのほとんどは、一括購入ではなく25~35年のローンを組んでおり、返済期間が5年未満というのは、まだ毎月払っているローン返済のほとんどが利息という段階。
借入先の金融機関から毎年とどく、住宅ローン年末残高証明書をみていただいたことがあればご存知でしょうが、はじめのうちの返済では、元金はそれほど減っていないでしょう。
ここまでのデータからも、住宅ローン残債がまだまだ残っている状況で離婚をするケースというのは、珍しくはないことが分かります。
離婚にともなうイエ事情
財産分与においてモメる原因 No.1!?
株や現金などと違って、不動産はキレイに半分に分けるということができません。
そのため、持ち分で分けたとしても、離婚後も同居するなどでない限り、住めるのはどちらか一方ということになります。
また、その価値が何百年たっても落ちなかったり、むしろ上がったりすることもあり、相続争いなどで裁判になったりしていますよね。
夫婦でも婚姻期間中に購入したのであれば、ふたりの不動産ですから、話しあった上でしっかり財産分与をしておかなければ、後にトラブルに発展することもあります。
カンタンにはいかない名義変更
不動産そのものや住宅ローンなど、離婚にともなって名義変更をしたいと思っても、あなたと奥さまだけでできることではありません。
ローンがまだ残っているということであれば、抵当権者である金融機関から事前に承認をもらわなければならず、審査をクリアする必要があります。
ローン自体の名義をかえることに関しては、今ローンを組んでいる債務者とおなじくらい収入があり、返済能力があるとみとめられる他にも、連帯保証人を立てるよう求められたりすることもあるでしょう。
新規でローンを組むときよりも、厳しい審査基準になる金融機関もあるようです。
名義変更がみとめられなかったからといって、名義をそのままにして名義人以外が住んでしまったりすると、何かあったときに問題がおこります。
たとえば、債務者に万が一のことがあったとき、住宅ローン残債分の保険金がおりるハズの団体信用生命保険で、契約違反をしたとして保険金がおりないこともありますので、注意が必要です。
離婚後もつづく連帯債務者・連帯保証人という関係
離婚届の提出と、不動産契約はまったく別物です。
そのため、夫婦で連帯債務者になっていたり、夫もしくは妻が連帯保証人になっていたりする場合、その関係は離婚をしたからといって、変わるものではありません。
連帯債務者・連帯保証人などを変更するためには、借り入れ先の金融機関からの承認が必要であり、審査をすることになるでしょう。
この変更については、そう簡単にできるものではありません。
詳しくは、《url住宅ローン返済中に離婚名義変更はできる!?》にも書いていますので、こちらも併せて読んでみてください。
売却してスッキリ離婚という選択肢
今までにお伝えしてきた通り、住宅ローンが残っている家がある場合には、離婚届をだしておわりとはいきません。
後々のことを考えて、トラブルのもとである不動産も、離婚を機にリセットしておきたいとの思いから、売却を選択するケースも少なくありません。
離婚をして、お互い新たな生活をスタートさせているのに、権利争いでいつまでも裁判がつづいている…
裁判とまではいかなくても、家をめぐってギスギスした関係がつづいている…
お子さまがいらっしゃれば、完全に縁が切れることはないかもしれませんが、新生活をはじめれば、お互いどういった状況になるかは分かりません。
離婚から数年もたてば、新たなパートナーができていることだってあるかもしれません。
そうなれば、離婚した相手とのあいだで、いつまでもズルズルと問題をひきずっているというのは、気持ちのいいものではないですよね。
そんな状況は、あなたも望んでいないでしょうし、お子さまだってそんな両親の姿をみたら、とても傷ついてしまうかもしれません。
家という物理的に分けられないモノがあるために、精神的に疲弊してしまったり、大切なひとを傷つけてしまったりするくらいなら、たとえローンが残ってしまったとしても、売却をしてお互いスッキリするというのも、ひとつの考え方ではないでしょうか。
残債アリの家を売るには
住宅を売却したお金で、ローンを完済することができる、アンダーローンの状況であれば、ローンの返済をしてのこったお金は、夫婦ふたりで財産分与をすればいいでしょう。
しかし、住宅ローンを組んでから、まだ数年しかたっていないようであれば、ほとんどが売却金額よりもローン残高のほうが高く、残債がのこってしまう、オーバーローンになるでしょう。
ローンを組んでいるあいだの住宅には、抵当権というものが設定されており、あなたが借り入れをした金融機関などが抵当権者として存在しているハズです。
この抵当権者は、もしもあなたからの返済が滞ってしまったら、その住宅を競売にかけて、返済金として回収をすることができます。
住宅購入ともなれば数千万円はかかるものですが、金融機関は「購入資金をあなたに貸す」というリスクを負うかわりに、そのお金が返ってくるまでは、抵当権という権利をもっているということです。
逆にいうと、”ローンを完済すれば抵当権ははずれる”ということになります。
本来、まだ抵当権がついている(ローンが残っている)住宅は、売却することができません。
ここでは、オーバーローンになってしまう売却においては、どんな方法をとることができるのかをお話ししていきます。
手元資金でのこりを一括返済
売却代金をローン返済にあて、残ってしまったローン分を、手元にある資金で払うことができるのであれば、売却するにあたって問題はないでしょう。
完済できる金額での売却依頼
売却代金だけで完済できるようにと考えると、価格設定がまわりの相場とかけ離れてしまうかもしれません。
考え方としては、手元にある資金とたして完済にできる金額、という方がいいでしょう。
それでも、まわりの相場より高くなってしまっていれば、なかなか買い手がつかないことも考えられます。
このあたりの価格設定は、仲介を依頼する業者ともよく相談して決めるべきでしょう。
希望どおりに…とばかり考えてしまうと、買い手がみつかるまでにかなり時間がかかってしまうかもしれませんが、売れるまで離婚するのも待つというワケにはいかないでしょう。
売却が決まるまでの間に、トラブルが起きないようしっかり話しあい、取り決めなどがあれば、きちんと公正証書をつくっておいた方がいいでしょう。
任意売却
簡単にいってしまうと、残ったローンの一括返済はできないので、その分を無担保ローンに組みかえて、分割にて返済をしていくということです。
コレができるなら話が早い!と思われたかもしれませんが、誰もが選択できるワケではありません。
本来は、完済をしたら抵当権をはずしますよ、という約束のもとに融資をうけているのですからね。
この任意売却については、別記事『任意売却とは?競売との違いも含めてわかりやすく解説』にて、くわしくお話ししていますので、こちらも併せてお読みいただければと思います。
まとめ
売却をするにしても、どちらか一方が住みつづけるにしても、のちにトラブルを招くことがないよう、しっかりと話しあいをしておくことでしょう。
離婚をしたあとには、それぞれ別々の生活がスタートするのです。
お互いが気持ちよく、新たな道を歩んでいけるよう、揉める原因となりうるものは、できるだけ残さない方がいいのではないでしょうか。
まずそういったことを話しあうにしても、あなたの家の現状を把握しなければ、話しあいになりません。
今のローン残高はいくらで、売却するとしたら相場はどのくらか。売却したら残債はだいたいどのくらい残る予定で、一括返済ができそうなのかどうか。ムリならあなたの状況で任意売却はできるのかどうか。
これらをふまえた上で、お二人にとってどうすることが最善なのか、話しあうべきでしょう。