「 任意売却について、どういうものかは分かった。 」
「だけど、いざ任意売却となったら、どうなるのだろうか。」

今後の生活がどう変わっていくのか?
その過程でなにが起こるのか?

引っ越しはいつするのか?
時間に追われてあわててバタバタしたりしないか?

この手続きになにか用意するもの、やることがあるか?
今後の支払いはどうなるのか?

などなど、不安に思うことや分からないことも多いですよね。

かといって、気軽に誰かに相談できるものでもありません。

あなたの周りだけでみれば、同じような経験をされている方は、ほとんどいらっしゃらないでしょう。

あなたが、不動産会社にご相談をはじめてから、全てを整理して新たな生活をスタートさせるまでの一連の流れを、表にまとめています。

ひとつひとつの流れの中で、一体どんなことが起こるのか、ということも後に詳しく見ていきます。

この記事の目次

任意売却の流れ

では、実際にこれら任意売却の流れの中で、具体的にどんなことが起こるのか。
そして、注意すべき点やポイントとなる点を、くわしく見ていきましょう。

0.あなたからのアクション

任意売却の流れをご説明する前に、そもそもの部分としてお伝えしておきたいことがあります。

それは何かというと「競売」というのは、住宅ローンの支払いができないまま、そのままにしておけば進んでいくものです。

しかしこの「任意売却」は、あなたが動かないことには何もはじまりません。

どうなんだろう…と思いながら、そのまま時が経ってしまって、いざ相談にいった時にはもう間に合わなかった。

ということも、残念ながら実際にあります。

そのため、まずあなたが相談にむけて行動をおこす、ということが大前提になってきます。

1.ご相談先の決定

では、いざあなたが「相談しよう!」と思ったところで、「任意売却もできますよ」という不動産会社は、たくさんでてきます。

ここが本当にこわいところなのですが、「任意売却」という取引は、ただ家を売りたい人と、買いたい人をマッチングさせる、通常の売買取引とはまったくちがいます。

不動産のみならず、幅ひろい専門知識が必要とされる取引なのです。

そしてもう一つ。

『 どの会社に任せるかで、あなたの任意売却が成功するか失敗するか、結果はかわってしまいます

家の近くにあるから… 大きい会社で有名だから… 知り合いが不動産関係だから… 付き合いで紹介してもらったから…

”ただなんとなく” の理由で決めることほど、怖いことはありません!

1-1.任意売却を専門とする会社を選ぶ

債権者(住宅ローンを組んでいる金融機関や保証会社)との交渉や調整、競売や法律にかんする専門知識や、住宅ローンのしくみなども、詳しく分かっていなければ、交渉などもまともに行えないでしょう。

たとえ不動産会社を何十年とやっていても、「任意売却」ではじめてみる書類・はじめて行う手続きが、山のようにあるのです。

それから、たとえ会社や組織がおおきくて、”年間○○〇〇件の実績”などと謳っていても、あなたのパートナーとなる担当者が、経験豊富とはかぎりません。

債権者も人間です。

交渉や調整がスムーズかつ有利にすすむかは、あなたが選ぶパートナーの知識や経験、それからコミュニケーションスキルにかかっているのです。

そもそも、あなたとコミュニケーションがきちんと取れない人が、債権者とはコミュニケーションが取れる、とは思えないですよね。

1-2.経験と実績

不動産業界での経験がどれだけあるのか。

そして、「任意売却」取引の実績はどのくらいあるのか。

もっというと、その担当者個人が、今までにサポートした実績や件数、ということですね。

私が今までに、100件をこえる「任意売却」をお手伝いしてきた中で思うことは、どれひとつとして同じケースはない、ということ。

そのため、お客さまにとっての最善策は、おひとりずつ違うということでもあります。

数多くのサポート実績があるということは、それだけの数の最善策を知っている、ということでもあります。

それから、「任意売却」を担当する不動産会社は、法律や税務などもからむことから、弁護士や税理士ともつながりをもっています。

こういった専門家たちと、良好な関係をきずけていなければ、たくさんの実績を積むことも、難しいでしょう。

あなたのこれからの人生に、大きく関係してくるワケですから、誰よりもあなた自身が一番、安心して任せられるパートナーを、選びたいとお考えですよね。

1-3.あなたに対して誠実である

あなたも、債権者も、あなたが選ぶパートナーも、みな人間です。

お互いに、気持ちよく接することができなければ、交渉や調整など、スムーズに進めていくことは難しいでしょう。

電話・メール・対面など、あなたが接してみて、安心感をえられる人でしょうか。

連絡したのにしばらく返事がない、電話をかけても出ず、折り返しもないなど、あなたが不安に感じることはないでしょうか。

ただひたすら、良いことばかりを伝えるのではなく、デメリットや注意点なども含めて、丁寧に話してくれる人でしょうか。

なによりも、ちゃんと話を聞いてくれている、とあなた自身が感じられるかどうかです。

「任意売却」は、最短2ヶ月のケースもありますが、通常3~6ヶ月という長いお付きあいになります。

それから、あなたのとてもデリケートな部分を、お話しする相手でもあるのです。

あなたが気持ちよく新しいスタートを切るために、二人三脚で協力しあっていける相手かどうか、という視点でパートナーを選びましょう。

2.マイホームの査定

通常、依頼したパートナー会社が、無料で査定をおこないます。

あなたのご自宅に訪問し、状態の確認をおこなうとともに、近隣物件の相場や過去の取引事例などもふまえて、価格査定をします。

ただし、あなたとパートナー会社との間で、好き勝手に価格を決められるというわけではありません。

のちに債権者側に「任意売却をしたい」、という申し出をするときに、あなたが依頼をしたパートナー会社に、販売価格についてもアドバイスを求めることになります。

この段階では、あなたのマイホームが売却できたとして、そのあと残債がいくら残るのかをしるため、銀行から”住宅ローン残高証明書”をとりよせるように、と言われることもあるでしょう。

そのあたりはパートナー会社からあなたに、前もって案内をするハズです。

3.あなたの状況からみた最善策の判断

あなたの返済状況や、そのほかのお支払い状況、残債額やその後の新生活イメージも含めて、お話しをしていきます。

あなたが一番大切にしたいこと、一番さけたいことや、お心にかかることなどをしっかり伺いながら、あなたと一緒に最善の方法を考えていきます。

ここで、あなたが選ぶパートナー会社の、経験や実績の差がでるでしょう。

(強引にすすめてきたり、あなたの話を聞かないような会社は論外です。)

そしてあなたが最善策に納得をして、前にすすむことを決めたら、そのパートナー会社と”媒介契約”を交わします。 (ここで契約の費用などは必要ありません)

4.任意売却の手続きを開始

”媒介契約”をもって、今後はパートナー会社が、あなたの代理として、債権者との交渉や調整、販売活動などもふくめて、おこなっていくことになります。

5.債権者から任意売却の許可をえる交渉・調整

ここではじめて、債権者側に「任意売却」の申し出をします。

あくまで通常の売却とはちがい、債権者側に売却のハードルを下げてもらう代わりに、債権者側の意見も、取り入れなければなりません。

販売する価格や期間、引っ越しや税金滞納分その他、どこまでの費用を、売却した代金から控除してよいか、などを交渉・調整して決定します。

債権者側としても、売却したその時に、一円でもおおく返済分として回収したい、という思いがあります。

そのため、なんでもかんでも費用として認めてはくれないでしょう。

しかし、あなただって、これから新たな生活をスタートさせるのです。

任意売却がおわった後に、税金の支払いが残ってしまったり、引越し費用が持ちだしになってしまうことで、手元の資金があまりにも少なくなってしまっては、なにかあった時どうしよう…などと、不安に思われますよね。

環境の変化から、
「子どもの具合がわるくなって、病院にいきたい」

もうそろそろ寿命ではあったが、
「よりによって、新しい家に引越ししてスグに、冷蔵庫が壊れてしまった」

予期せぬことがおこって、「手元にまったく資金がない」では、あなただって困ってしまうかもしれません。

ここの交渉・調整が、有利にすすめられるかは、あなたのパートナー会社の腕の見せどころといえるでしょう。

それから、あなたのマイホームを担保とする、債権者全員から許可をもらわなければ、任意売却をすることはできません。

ひとりでも許可しないということになれば、任意売却をあきらめて、競売にかけられるしかない、というとても重要な交渉になります。

ここはどうしても、パートナー会社の経験値の差がでてしまう、と言わざるをえません。

6.販売活動を開始

債権者全員からの同意をえることができてはじめて、販売活動をスタートすることができるようになります。

どのくらいの期間、販売をすることになるのかは、その時のタイミングで変わるでしょうから、一概にはいえませんが、おおよそ2~4ヶ月ほどかかるもの、と思っておいた方がいいでしょう。

通常の売却とおなじ流れで、基本的にはあなたのパートナー会社が、広告をだしたり、業者間で情報を開示したりしながら、購入希望者をつのります。

どこまでの情報を開示するかなど、購入希望者をつのる上で、なにかあなたの意向があれば、遠慮なくパートナー会社へ伝えましょう。

こういった時に、”遠慮なく伝えられるような相手かどうか”というのも、パートナーを選ぶうえで、大切なポイントでしょう。

それから、販売活動をしていると、購入を検討するために家の中を見たい、という人が少なからずいるでしょう。

あなたも、いつまでも買い手がみつからずに、 「このまま希望者があらわれずに、競売にかけられてしまうのだろうか…」と、モヤモヤした生活を、長くつづけたくはないですよね。

一日もはやく購入してもらえるよう、もしも内覧をしたいという人がいれば、あなたも進んで協力をしましょう。

しかし、もしここで販売期間があまりないと、焦りから思ったよりも買いたたかれてしまう、ということにもつながりかねません。

もっとも、そうならないように、パートナー会社の存在があるわけですが、ここでも経験値の差がでてきてしまうでしょう。

「早めの相談」
「信頼できるパートナー選び」

この二つが、あなたにとって「任意売却」を、よりよいカタチで成功させるための、重要なカギともいえるでしょう。

7.購入者決定/(あなた)新しい住まいへ引越し

販売活動をおこない、購入したいという人が現れたら、即OK!ではありません。

7-1.債権者からの許可

こちらもまた、債権者からの許可をえなければなりません。

購入希望者からの「購入申込書」と、売却代金の配分表を、債権者に提出します。

その希望者が、買主としてふさわしいかどうか、債権者側もチェックしてからでないと、売買をおこなうことはできないのです。

配分表とは、 住宅ローン返済分、税金や管理費などの滞納分、ここまでサポートしたパートナー会社への仲介手数料、あなたの引越し費用などの控除分など、「売却代金をなににいくら割りあてるか」を明記したものです。

これまでに、パートナー会社が交渉をおこない、必要経費として認められているものが、この配分表に明記されます。

これらを債権者が納得して、やっと売買契約を結ぶことができるのです。

7-2.売買契約締結

買い手側と、正式に売買の契約書を交わします。

この契約時に、あなたが売却代金をうけとるのではなく、この日は「手付金」を買主側から受けとります。

ここは通常の売買と同じ流れではありますが、任意売却という事情もあり、多くの場合「手付金」は、引き渡し日まで保管するのはあなたではありません。

手付金を使ってしまうことがないよう、あなたのパートナー会社もしくは、買い手側の不動産会社が、預かることになります。

通常、引き渡しは契約日から、1ヶ月~1ヶ月半後になることが多く、 あなたはその日までに、新しい住まいへ引っ越しをすることになります。

7-3.新しい住まいへの引っ越し

配分表にもとづいて、債権者からあなたが引越し費用をうけとるのは、引き渡し日ということになります。

つまり、実際の引越しよりもあと、ということです。

それまでに、引越しの資金を手元にのこしておく必要があるのですが、それすらも難しい、ということが考えられる場合は、先にパートナー会社に相談しておきましょう。

8.引き渡し/売買代金決済【任意売却完了】

必要なモノなどは、あらかじめ案内がありますが、この日をもって不動産の抵当権は抹消され、無事に売却をすることとなります。

所有権の移転をして、あなたに売却代金が支払われます。

配分表にもとづいて、あなたから金融機関などに返済や支払いがおこなわれ、任意売却は完了です。

このときに、あなたの手元に引越し費用がもどってくる、ということです。
(あくまで債権者との交渉で、引越し費用の控除が認められている場合)

9.残債務・返済の見通し確定

ここですべての清算をおえ、あなたがこれから向き合っていく残債なども確定します。

先の見えない不安から、やっと終わりがみえた。

そう思って、切り替えていきましょう。

債務整理や自己破産など、もし仮にこの先の支払いに関して、さらに相談されたいということであれば、一度あなたのパートナー会社に相談されてみるといいでしょう。

実際の手続きなどは、弁護士があつかう内容にはなりますが、相談料がかかる場合もありますし、その弁護士によって考え方がちがったりもします。

任意売却を専門にあつかっている会社であれば、そのあたりの知識ももっているハズですから、先にアドバイスをもらってみるのもひとつです。

もちろん、パートナー会社も、弁護士とのつながりはもっていますので、具体的にすすめるとなれば、あなたのことを任せられる、信頼できる弁護士を紹介してくれるでしょう。

あなたにとって、「任意売却がおわれば何もかも終わり」ではないように、あなたのパートナー会社にとっても、何もかも終わりではありません。

その後のことでも、なにか心配なことがあれば、遠慮なく聞いておきましょう。

10.再建にむけての新生活がスタート

あなたにとって、ここからがスタートであり、これからを大切にしてほしい、私は心からそう思っています。

私のところにご相談にこられる方のほとんどは、ギャンブルや酒などの浪費から返済できなくなったのではありません。

そのほとんどは、マイホームを手にした時の未来予想図から、会社が景気の影響をうけたことにより、その予想図から大きくハズれてしまったのです。

今までご家族のために、真面目にコツコツと働いてきた方々ばかり。

それ故に、「借りたものは早くお返ししなければ」と、無理に背負ってしまう方もとても多いです。

お気持ちは、とてもよく分かります。

ですが、一度あなたのその肩の力を抜いてください。
どうか目の前にいる、あなたの大切なご家族のことを見てください。

あなたは、あなたとご家族のこれからを、もっと大切にしていいのです。

私がここでお伝えしたいのは、「焦らずに、とにかく自分のできる範囲」で続けていくこと。

それも、立派な「誠意」だということを、覚えておいてください。