別の記事では「任意売却」と「競売」がそれぞれどんな特徴があるのか、ということをかかせていただきました。

住宅ローンの滞納問題を解決する方法である「任意売却」ですが、メリットが多い分、やはりデメリットもいくつかあります。
もう一つの解決方法であり、比較されることの多い「競売」と比べての部分も含め、「任意売却」のメリット・デメリットを、それぞれ見ていきましょう。

「任意売却」のメリット

1.市場価格に近い価格で売却できる

一般の売買と変わらない取引となるため、一般市場により近い価格で売却をすることが可能です。 (競売にかけられると、市場価格の5~7割の価格で落札されることが多く、物件の状況によっては、3割で落札された事例もある)

※実際には競売にかけられる前に、というタイムリミットがありますので、市場よりも少し低い価格設定にすることが多いです。

2.住宅ローンの残債をより多く減らせる

競売よりも高い価格で売却ができれば、その分あなたが手にする売買代金は多くなり、返済に充てられる額も多くなります。

任意売却でも競売にしても、残債は残るとはいえ、一円でも少なくすることはとても重要なこと。売って終わりではなく、あなたにはその後の生活もあるのです。

3.残債の減額や分割などの相談ができる

任意売却をした後に、あなたが住宅ローンと同額にて、残債の返済を続けることは、現実的ではありません。

また、任意売却という方法を選択するわけですから、債権者 (住宅ローン借入先の銀行や保証会社など)も、今のあなたにそこまでの返済能力がないことは、重々承知です。

今のあなたの収入や生活の状況などを考慮して、月々払える現実的な返済金額や返済方法を、債権者と決めていくことになります。

※給与の差し押さえなどは、通常行わないことが多いです。

4.持ち出し費用をゼロにできる

通常の売買となると、所有権移転登記や仲介手数料などの諸経費がかかり、その費用が捻出できないがため売却もできず、身動きが取れないといったことが起こります。

任意売却において、そのような登記費用・諸経費などは、債権者が負担するため、あなたが手元に資金を用意できない、などといった心配はいりません。

また、競売にしても任意売却にしても、売却が決まれば当然引っ越しをすることになります。その際には引っ越し費用も必要となりますが、任意売却であればこちらも債権者との交渉により、捻出することができるのです。

競売になってしまうと、このような交渉をすることもできない上に、手元に資金を残すことも難しくなります。

”家を失う ”というだけでも、あなたにとってとても精神的にツラい状況のはずです。売却を終えた後のあなたの新たな生活・人生だって、これまでと同様に大切にしていただきたい。

そのためにも、多少なりとも手元に資金を残すことが、生活の再建をする上でも重要になってきます。手元に資金を残すという点でみても、競売にくらべて任意売却を選択することに、大きなメリットがあると言えるでしょう。

5.近隣に事情をしられずに売却できる

競売となれば、裁判所のホームページや官報などの情報紙、新聞、インターネットによって、競売にかかったことが知られてしまう可能性があります。

また、落札希望者が近隣に聞き込みをして、事情を知られてしまうこともあり、そうなると近辺に引っ越しも、しにくいという状況になりかねません。

近隣に事情を知られてしまったがため、遠くに引っ越しをせざるを得なくなり、泣いて嫌がるお子さまに、転校というつらい経験をさせてしまい、それがとてもショックを与えたようで、半年たった今も新しい学校に馴染めないでいる。
実家の近くに購入した住宅であったため、自分たちが隣町へ引っ越した後、ご両親も近隣との関係がうまく行かなくなり、結局実家を売却して転居。
何十年と築いてきた近隣の友人たちと離れ、高齢になってから知らない地へ越したためか、転居後の両親は外出も極端に減ってしまった。

悲しくもこういうことが起こってしまうケースもあります。

任意売却をすれば、まだ物件所有者であるあなたが、合意の上で物件の売却をするので、外部に事情をしられずに、通常の住み替えとして売却が行えます。
あなたとあなたの大切なご家族を守る、任意売却という手段は、そのためにあるとも言えるのではないでしょうか。

6.明け渡し日(引越し)など相談の余地がある

競売では強制執行となれば、その日までに退去せざるを得ません。
しかし、任意売却であれば、あくまで相談にはなりますが、買主との交渉により、明け渡しまで3ヶ月の猶予をもらう、ということも可能です。

7.そのまま住み続けられる可能性がある

親子間売買取引や、リースバック取引といった方法をとることで、そのまま今のご自宅に住み続ける、といったことが可能な場合もあります。

たとえ所有権などの内面的事情が変わってしまったとしても、今まで住み慣れた自宅を離れず生活が続けられる。外面的な事情、例えばお子さんの学校や奥さまのパート先、何年も築いてきたご近所との関係も、今のまま何も変えずに続けることができるのです。

この点については、メリット・デメリットなどもありますので、別の記事で詳しく見ていきます。

8.精神的負担が軽減される

これが一番ではないでしょうか。

この先どうなってしまうのだろう…と、いつまでも終わりの見えない不安や恐怖でいっぱいのまま、日々の生活を送ったり、大切なご家族や親類など身近な人と言い合いになり、関係に亀裂が生じてしまったり、あなたの精神だけでなく、肉体をも蝕む要因になりかねません。

強制的に追い出された格好でなく、新生活を始めるにあたっての、多少の手元資金があり、今のあなたの状況もふまえて残債や返済も相談の上、きちんと整理されることで、明確なゴールが見えてくるのです。

周囲との関係も変えることなく、終わりが明確になることで、精神的苦痛が軽減されることは、あなたやあなたの大切なご家族にとっても、とても大切なことでしょう。

ここまで、「任意売却」をすることのメリットについて、お伝えしてきました。
ここで終わり!ではなく、 やはりメリットがあれば当然デメリットも存在します。
どんなデメリットがあるか、見ていきましょう。

「任意売却」のデメリット

1.ブラックリストに載る

これは、任意売却=ブラックリストというより、ローン支払い滞納が続くことにより、ブラックリストに載ってしまうということです。そのため、一定期間はお金を借りる・クレジットカードを作るなどの行為はできません。

ただし、信頼は回復できるものですから、今後のあなた次第であって、一生クレジットカードが使えない、ということではありません。たとえ一度信頼を失ってしまったとしても、今後また取り戻していけばいいのです。

これに関しては、あくまで競売でも同じことですので、競売と比べてのデメリットというよりは、共通してのデメリットになります。

2.連帯保証人に知られてしまう

これもあくまで競売も同じことです。

任意売却においても、連帯保証人の同意が必要となりますので、あらかじめ事情を説明しておく必要があります。ただ、あなたのために、あなたのことを信じて連帯保証人になってくれた方のことを考えてみてください。

ある日突然、競売にかけられたという通知をもって知ることになるのと、あなたの意思であなた自身の口から告げられるのと、どちらの方があなたの誠意が伝わるか。考えるまでもないですよね。

それに、競売に比べれば、連帯保証人の方に迷惑をかけてしまう度合も、かなり少なくて済むのです。

3.諸手続きや内覧対応などやることがある

競売では、ローンの支払いをせず、そのままにしておけば、着々と法的手続きがとられ、競売にかかり落札されるまで、特に何もしなくても進んでいきます。

任意売却では、各種に手続きがあるため、その手続きを行ったり、売りに出している住宅の購入を検討している人から、内覧を申し込まれれば、対応することになります。(一円でも残債を多く減らすためと考えれば、デメリットとはいえない気もしますが)

4.任意売却できない場合がある

ここまでで、「なんだ、じゃあ任意売却しよう」を思われたかもしれませんが、あなただけの意思でポン!と決めて行えるものではありません。

どんな場合に任意売却ができないのか、その点についても見ておく必要があります。

4-1.連帯保証人や連帯債務者と連絡がつかない

任意売却を行う時には、連帯保証人や連帯債務者がいる場合、その人からも同意を得る必要があります。

連絡が取れないという場合は、同意を得られないのと同じ扱いであり、勝手に任意売却をすることができないため、そのまま連絡がつかなければ、競売という選択肢になります。

4-2.債権者全員から同意が得られない

たとえば、

・詐害行為や背信行為など、債権者とあなたとの間で信頼関係が破綻している
・任意売却に協力をしても弁済を受けられない債権者(債権者複数の際)
・あなたの案件を担当する任意売却会社の評判が悪い

など

あなたの不動産を担保に、債権者となっている全員からの同意が必要となります。

4-3.物件に買い手がつかない

たとえば、

・内覧希望者に対して、協力的でない
・物件価格の折り合いがつかない

など。

通常の売却とは異なり、競売にかけられるまでという、限られた時間の中で買い手を見つけなければなりません。

「こんな金額じゃ売りたくない!」などと、ゆっくり探している時間的余裕はないのです。
それまでに見つからなければ、競売にかけられるようになります。

4-4.税金の滞納がある

税金(特に固定資産税)の滞納がある場合でも、役所から不動産の差し押さえが行われていなければ、そのまま任意売却の手続きに入ることができます。

たとえ役所から差し押さえが行われていたとしても、そこで自己判断をしてしまうのではなく、とにかく専門家に相談してみた方がいいでしょう。

本当は可能性があるのに、ないと思い込んで諦めてしまっては、非常にもったいないことですので、とにかく一日も早く相談しましょう。

任意売却については、通常の不動産屋さんとは別で、専門に扱っている不動産会社があります。通常の売却とは異なり、専門的知識を要する取引になりますので、知識や経験のない不動産会社に任せることは、とても危険です。

ただ、非常に怖いのが、通常の不動産売買を扱う会社でも、任意売却を取り扱うこと自体はできてしまいます。あなたがどの不動産会社にお願いするかで、結果が変わってしまうということなのです。

この辺りは「任意売却とは?競売との違いも含めてわかりやすく解説」に詳しく書いていますので、そちらも併せてお読みください。

4-5.時間的に間に合わない

一般的に、任意売却の期限は、競売の開札期日の前日までであり、不動産を売却するには、ある程度の日数が必要になります。開札期日の前日までに、引き渡しまでを行わなければなりません。

購入希望者を募ったり、内覧をさせたり、債権者との交渉をしたりなどの時間も考えると、おおよそ二ヶ月くらいは時間が必要になるでしょう。
(このあたりは、相談する任意売却会社によって感覚が多少違いますから、やはり一日も早く専門家に相談した方がいいでしょう)

まとめ

ここまで、「任意売却」のメリットとデメリットを挙げさせていただきましたが、結局のところデメリットは「競売」にしても同じで、共通のデメリットがほとんどです。

「競売」の方に何かメリットがあるとすれば、それは”何もしない”ということくらいではないでしょうか。そのまま滞納を続けていれば、ただ法的に進んでいくだけですからね。

しかし、ここで考えていただきたいのは、新生活をスタートさせることになるのなら、どちらの方があなたにとって生活再建しやすいか。そして、あなただけでなく、あなたの大切なご家族や身近な人にとって、どちらの方がいいのか。

売って終わりではなく、これからのあなたとあなたのご家族の人生にも関わることですから、ここは本当によく考えていただきたいところです。